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導入事例

首都大学東京 都市環境学部 都市基盤環境コース


GurobiおよびAIMMS を採用した水道送配水時電力最小化システム

 
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国内: 国内

分野: エネルギー

製品: AIMMS, Gurobi Optimizer

都市環境学部 都市基盤環境コース 荒井研究室では、水および環境という大きなテーマの中で、水道、下水道、廃棄物に関する都市の問題の解決に取り組んでいます。その中で、統計解析、数学モデル、最適化手法といったアプローチを中核技法としている点が、研究の最大の特長と言えます。現在取り組んでいる東京都水道局との共同研究では、送配水ポンプの電力使用量を削減することを目的に、どの浄水場からどの配水池を経由して水を送るのが最も合理的なのかといった水運用計画をテーマに掲げ、数理最適化手法の援用を展開しています。水道事業は、浄水処理の過程だけでなく、水輸送においても多くのエネルギーを消費しています。実際に、送配水過程での電力使用量は全体の約6割も占めると言われており、水1㎥送るのに必要な電力原単位も施設ごとに異なります。本共同研究では、配水区域の需要を満たしながら、送配水システム全体の電力使用量を最小化するような「ルート・流量決定問題」としてモデル化を試み、混合整数線形計画法(MILP)によって定式化を実現しました。さらに、提案したMILPモデルの有効性を検証するため、実在する送配水システムを対象にした仮想シミュレーションも試みています。

 

開発システムの概要について

浄水場11箇所、配水池29箇所、56箇所の配水区域を持つネットワークの各構成要素の隣接関係、ポンプの電力使用量推定式、配水区域の需要量等を入力データとして準備し、これら情報に基づいてAIMMSでモデル化を行い、Gurobi Optimizerにより最適化計算の実行をします。どんなネットワークでも入力データさえ与えれば、モデル化と最適化計算の実行、計算結果の出力といった一連の流れを1つのパッケージとして自動的に行ってくれるのが今回開発したシステムです。今回のシステムの特徴としては、単に最適化計算をするだけでなく、送配水ネットワークの構造をISM(Interpretive Structural Modeling)法を用いた、ネットワークの階層化を実現する機能も組み入れたことにより、ノードの上流、下流の関係の把握ができ、出力結果の視覚化も可能になっています。
LPやMILP といった最適化手法は、今回の水道工学の分野のみならず、廃棄物処理、リサイクル分野でも適用した例が多くあり、収集運搬や施設配置などの計画問題に応用されています。なお、私の学位論文は廃棄物をテーマにした研究であり、コスト最小化だけでなく、環境を考慮した多目的最適化の観点から処理施設の整備計画について論じています。我々が対象としている問題は決して単純なものではなく、今後更に問題の規模も大規模化し、その複雑度も増して行くと考えられるため、こうした時にこそ役に立つのが最適化技術であろうと信じています。今まで経験豊富な職員がベテランの勘を駆使して対処していた問題に対し、「うん、こうした最適化手法は確かに役に立ちますね。」と、現場の職員、最適化手法を未だ活用していないエンジニアが、経験や勘だけでなく最適化技術も役立つと思うことができる研究成果を作り出したいと考えています。

 

 

最適化技術の将来に期待されること

最適化技術をもっともっと多くの人に活用してもらい、その有用性を知ってもらうべきだと考えます。数理計画アルゴリズムとコンピュータの処理性能が向上し、最適化が専門ではないエンジニアや一般の研究者にとっても身近な道具の1つとして、最適化技術を使えるようになったと感じます。現実の社会では「無駄を如何にして解消させるか」、「効率を何%アップさせたい」といった合理性、効率性の向上が以前にも増して強く求められていると思います。そう考えると、いろいろな場面での最適化技術の適用や応用が必要となる一方、実際の問題解決に直結した、(「理論」「サイエンス」のレベルではなく)真の意味での「技術」が期待されると思います。

 

導入後のメリット

従前の使用ソフトウェアでは、定式化はその対象問題ごとに人の手で書き下して行かなくてはならず、小規模ネットワークが対象であればさほど気になりませんでしたが、今回の共同研究で対象とするような大規模ネットワークでは極めて面倒な作業であり、入力ミス等の心配もあってその点が気になっていました。しかし、Gurobi OptimizerおよびAIMMSをベースとした本システムを構築したことで、どんなネットワークであっても入力データさえ与えれば自動的にモデル化をし、計算を実行してくれるため、これら煩雑な作業の解消が実現でき、また、東京都の一部分だけを対象に進めていた研究から全域に拡大する必要性があった時期でもあったのですが、これもスムーズに実現することができました。本システムを導入後は、使い勝手も良いため、学生たちに本システムを積極的に使うよう促した結果、彼らはすぐに使い方にも慣れ、現在では私よりも学生たちの使用頻度が高い状況です。学生には、今後もこのようなシステムを使う多くの機会を与えていきたいと考えています。

 

Gurobi Optimizer 採用にあたって

本システムの開発前は、某統計解析ソフトウェアの中でサポートされている最適化プロシジャの機能を活用していました。しかし、今回は数理計画問題を専門に取り扱う数理最適化ソルバー、そして、そのソルバーを動かすために必要となる定式化およびモデル化の部分を支援するツールがあるということを知り、Gurobi OptimizerおよびAIMMSを導入しました。

 


 

首都大学東京 都市環境学部 都市基盤環境コース 准教授 博士(工学) 荒井 康裕氏

最適化技術との出会いは、大学2年生の時の授業で線形計画法(LP)を学んだのが最初の出会いです。その講義を担当されたのが小泉明先生(現在、首都大学東京の参与兼都市環境学部の特任教授)であり、その熱心な講義を受け、システムズ アナリシスの考え方や応用数学の手法を用いたコンピュータによる解析に魅了されました。その後小泉教授の研究室に入り、先生の御指導の下で卒業研究と修士課程に取り組み、さらには博士論文も取得することになりました。現在こうして最適化手法を中核技法とした研究活動を繰り広げることができるのも、すべて恩師である小泉先生のおかげです。

首都大学大学東京 都市環境学部のWebサイト:
http://www.ues.tmu.ac.jp/civil/index.html
本システムのモデリングおよびプログラミング開発は、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社の技術支援を受け実施されました。
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 生産・物流関連Webサイト:
http://www.engineering-eye.com/category/01/index.html

 

首都大学東京 都市環境学部 都市基盤環境コース

首都大学東京は、2005(平成17)年4月に、都立の4つの大学「東京都立大学」、「東京都立科学技術大学」、「東京都立保健科学大学」、「東京都立短期大学」を再編、統合して設置した新しい大学です。
都市基盤環境工学(土木環境工学)(Civil & Environmental Engineerring)は、文字通り、市民のための工学であり、「美しい国土、都市の建設」、「安全にして安心出来る生活の構築」、「豊かな社会基盤の形成」を目途とする工学であり、その役割は、交通、物流、ライフラインなどの社会基盤の構築および運用、道路、鉄道、河川、橋梁、トンネル、地下鉄、港湾、上下水道、電力、ガスなどの都市基盤施設の計画、建設、運用、整備、維持管理、さらに社会環境、自然環境の維持、保全、人々の生命や資産を災害から守る防災など多岐に渡っています。

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